ブランディング
会社は、静かにいなくなる
建設業の倒産・休廃業 5,937件(2026年上半期)|リーマン後を超えた数字と、1年先まで仕事がある会社

今日、ある総合建設会社の社長と話しました。
公共工事や福祉施設など、数千万から数億円の建物を建てている会社です。長く地元でやってきて、この1年の仕事の見込みは、まったく問題ないそうです。
それでも、社長はこう言いました。
「建築は水物ですから。なければ、まったくない」
金利が上がった。資材が上がった。自分たちが得意としてきた規模の市場が、じわじわと冷え込んでいる。住宅も、いまは4,000万、5,000万と借りないと建てられない。
僕はその話を受けて、こう返しました。
「ハウスメーカーが、この半年で100社つぶれています。塗装や防水の業者は、5,000社です。異常事態ですよ」
話のあとで、調べ直した
言ったあとで、少し引っかかっていました。5,000社は、本当か。
話が終わってから、調べ直しました。
まず、ハウスメーカー。東京商工リサーチによると、木造建築工事業の倒産は2026年1月から6月で118件。前年同期の約1.9倍でした(東京商工リサーチ)。100社は、合っていました。
次に、塗装・防水。こちらは1月から5月で80件でした(帝国データバンク)。去年は1年で206件と2000年以降で最多で、今年はそれに並ぶペースです。多いのは確かですが、5,000社ではありません。
では、5,000という数字はどこから来たのか。
帝国データバンクの「建設業」の倒産・休廃業解散動向(2026年上半期)に、ありました。建設業全体で、2026年1月から6月までに、
・倒産:1,043件(前年同期比5.8%増)
・休廃業・解散:4,894件(同27.8%増)
・合計:5,937件
リーマン・ショック後の2009年、5,811件を超えました。
僕が覚えていた「5,000」は、塗装・防水の倒産ではなく、建設業全体で、倒産と廃業をあわせて消えた会社の数でした。
半年で5,937社。1日あたり、約33社です。
数字は違っていました。でも、事態は僕が言ったより深刻でした。
倒産の、4.7倍
数字を並べて、一番引っかかったのはここです。
休廃業・解散は、倒産の約4.7倍ある。
倒産は、ニュースになります。取引先に連絡が行き、新聞に社名が載る。
休廃業は、なりません。
後を継ぐ人がいない。職人が集まらない。資材が高くて、見積もりが合わない。「もう、ここまでにしよう」と、社長が自分で看板を下ろす。
誰にも知られずに、会社は静かにいなくなる。
5,937社のうち、8割以上がこの「静かにいなくなった会社」です。
なぜ、その会社には仕事があるのか
では、話をうかがった会社は、なぜ1年先まで仕事があるのか。
聞いて、驚きました。
広告宣伝を、あえてしていないんです。
昔から口コミを優先してきた。社長の言葉を借りると、「いいお客さんは、またいいお客さんを呼んでくる」。
その流れが、不景気と呼ばれるいまも、仕事につながっている。
僕はこれを聞いて、ブランディングの話だと思いました。
ブランドは、会社が自分で言うことではありません。お客さんが、よそで勝手に話してくれている状態のことです。この会社には、それが長い時間をかけて貯まっている。
ただ、口コミだけでは足りない
一方で、口コミには弱点もあります。
紹介してくれるお客さんも、同じ市場の中にいるということです。市場全体が縮めば、紹介の数も、いずれ減っていきます。
だから、仕事があるうちに、外に向けて話し始めておく。
じつはこの社長、月に1回、社員向けにコラムを書いているそうです。自分の考え方を、社員と共有するために。
これ、そのまま外に出せる財産です。社長が何を大事にして、どんな会社にしたいのか。口コミで来るお客さんが、事前に読める場所に置いておく。
仕事があるうちにやる発信は、攻めではなく守りだと思っています。
今日できる一歩
自社の業界の数字を、一度だけ調べてみてください。
そのとき、「倒産」だけでなく「休廃業」も見てください。 倒産の数だけ見ていると、たぶん実態を見誤ります。
そして、いまのお客さんがどこから来ているのか。紹介元を、紙に書き出してみてください。
その線が細くなる前に、次の線を張っておく。
さあ、いこうか😆
P.S.
その社長から、社員のみなさんに外の話を聞かせたい、というご相談もいただきました。
業界の外から見た「いま」を、現場の方にどう届けるか。これから一緒に考えていきます。
この記事の短縮版を note にも出しています。