ブランディング

草間さんって、彌生さんと関係あるの?

ブランディング

昨日、草間彌生さんの訃報が公表されました。

8月14日に、97歳で。亡くなる直前まで絵筆を手放すことなく、と公式の発表にはありました。

松本が生んだ、世界でいちばん有名な芸術家です。

同じ松本の、同じ「草間」。今日は、何度も聞かれてきたこの質問に、正直に答えようと思います。


「草間さんって、彌生さんと関係あるの?」

講演でも商談でも、名刺を出すと、本当によく聞かれるんですよ。

松本で「草間」と名乗っていて、相手が芸術に少しでも興味があれば、ほぼ確実にこの質問が来ます。

あまりに聞かれるので、10年くらい前に、父に聞いてみたんです。

そしたら、ひとこと。

「うちが本家だぞ」

聞いてないよ、と思いました(笑)

ナカツタヤさんと、冠婚葬祭

彌生さんのご実家は、松本駅の近くで種苗業を営んできたナカツタヤさんです。いまも種苗店として続いている、松本の老舗です。これは僕自身、お店で直接うかがったことがあります。

父によると、昔は冠婚葬祭のときに行き来があったそうです。これも父が直接見たわけではなく、父も、祖母から聞いた話だそうです。

つまり、祖母から父へ。父から僕へ。そうやって語り継がれてきた話なんですよ。

正直に言うと——僕自身は、彌生さんにお会いしたことはありません。いまは家同士の交流もない。系図を広げて確かめたわけでもない。父から「本家だぞ」と聞いた、という話です。

でも、うちの家が元禄時代から300年続いていると知ったとき、この話がすっと腑に落ちたんですよ。

それだけ長くこの土地にいれば、松本の草間家同士、どこかで繋がっていて不思議はない。

名前だけで、場があたたまる

この質問に「父からは、うちが本家だと聞いてます」と答えると、だいたいこう返ってきます。

「あー、やっぱり関係あるんですね!」

そして、場があたたまる。初対面の空気が、少しやわらかくなる。

これ、冷静に考えるとすごいことなんですよ。

僕は何もしていません。彌生さんが97年かけて磨き上げた「草間」という名前の恩恵を、同じ名字というだけで受けている。

ブランディングを仕事にしている人間として、これほど身近で、これほど強烈な実例はありません。

水玉を、何十年も

ブランディングの核は、一貫性です。

彌生さんは、水玉とかぼちゃを何十年も描き続けました。途中で流行に寄せない。誰に何を言われても、同じモチーフを掘り続ける。

だから世界中の誰もが、水玉を見ただけで「クサマ」と分かる。

2017年3月、松本市美術館の水玉の自動販売機。9年前の僕も、思わず撮っていました
2017年3月、松本市美術館の水玉の自動販売機。9年前の僕も、思わず撮っていました

このブログで3日間、井戸の話を書いてきました。井戸を掘った人はえらい、と。

彌生さんは、97年間、同じ井戸を掘り続けた人です。しかも亡くなる直前まで、絵筆という桶を手放さなかった。

継続がブランドになる。その頂点を、同じ名字の大先輩が見せてくれていました。


同じ名前を名乗る者として

彌生さんに会うことは、もう叶いません。

でも僕はこれからも、松本で「草間」と名乗って仕事をしていきます。名刺を出すたびに、あの質問をされて、そのたびに彌生さんのことを思い出すはずです。

同じ松本の空の下で、同じ名前を磨いてきてくださって、ありがとうございました。

心から、ご冥福をお祈りします。

さあ、いこうか。

P.S.

松本市美術館、近いうちに行ってきます。

(見出し画像:松本市美術館 撮影 663highland/CC BY-SA 4.0)

あなたの会社の「らしさ」は、どこにありますか

30秒で終わる診断があります。考えて出すものではなく、もともとあるものを掘り出すための入口です。