ブランディング
ブランドの話をしたら、僕の失敗を出せと言われた
価格で比べられる会社から抜けるための、情緒的価値のつくり方

昨日の夕方、16時から1時間。
中小企業家同友会で報告をすることになっていて、その事前の打ち合わせをしていました。テーマは、「価格で比べられる会社から、あなただからと言われる会社へ」。
用意した話を、ひととおり通しました。そのあとに返ってきたのが、これです。
「一般論はいいので、草間さんの失敗を、年表で出してください」
そうだよなあ、と思いました。失敗の話がいちばん面白いし、いちばん学びになる。 僕だって、聞く側に座ったらそこが聞きたい。
ダイヤモンドは、硬いから高いわけじゃない
先に、僕が用意していた話のほうを書きます。
ブランドって、ロゴをおしゃれにすることだと思われがちなんですけど、違います。ブランドは、お客さんの頭の中にある「選ぶ理由・買う理由」のことです。 自分で名乗るものじゃなくて、相手の中にあるもの。だから完全にはコントロールできない。それでも、設計して、伝え続けることはできます。
そのときに使うのが、価値を3つに分ける見方です。
機能的価値。 品質、納期、価格、スペック。数字で比べられます。だから相見積もりになるし、値切られる。
情緒的価値。 人柄、安心感、頼もしさ。数字にできない。「あなたから買いたい」はここで決まります。
自己表現的価値。 それを持っている自分が好き、人に話したくなる。
ダイヤモンドは、硬さで選ばれているわけじゃないですよね。「永遠の愛の証」という物語で選ばれている。気仙沼ニッティングのカーディガンもそうです。気仙沼の編み手さんが一着ずつ手で編む。注文してから届くまで、ずいぶん待つ。品質がいいから高い、では説明がつきません。待っている時間まで含めて、価値になっている。
技術が同じになるほど、「誰がやるか」「どんな話があるか」が効いてきます。AIで誰でも同じものが作れる時代は、なおさらです。

4つの事業が、1本でつながっている話
もうひとつ用意していたのが、ウェブエイトの18年です。
2008年に創業したころは、デザインと技術で戦っていました。つまり機能的価値です。相見積もりになって、安いところに負ける。悔しいから、もっときれいに、もっと安く。そればかりやっていました。
途中で気づきます。お客さんが欲しいのは、ホームページじゃない。売上です。 だからマーケティングまで見るようになりました。
そうしたら、次の壁が出てきました。売り方を整えても、その会社の強みが言葉になっていない。 「うちの強みは、丁寧なところです」で止まってしまう。それでブランド戦略の設計まで踏み込むようになって、今の形になりました。
ヴィンテージストックの買取も、M&Aのアドバイザーも、ファイナンスの支援も、やっていることは同じです。強みを見つけて、言葉にして、伝わる形にして、選ばれ続ける仕組みにする。4つに見えて、1本です。
……ここまで話して、出てきた言葉が「一般論はいいので」でした。
その話、きれいすぎませんか
同友会は、そういうところです。きれいに整った成功事例を聞く場ではなくて、経営者が自分の言葉で、うまくいかなかったところまで話す場。僕自身、支部長をやっていたころは、報告する人に同じことを言う側でした。
だから、言われたこと自体に驚きはありません。驚いたのは、自分が用意していたものの中身のほうです。3層の図も、18年の流れも、整いすぎている。整った話からは、何も持って帰れないんですよね。
たぶん、聞きたいのはこっちです。相見積もりで負けた日に何を思ったか。クレームの電話を受けて、どう返したか。社員が辞めたとき、何を変えたのか。ヴィンテージストックを始めたばかりのころ、どこで詰まったのか。
気づいてしまいました。ブランドの話をしている僕が、自分のブランドを機能的価値で説明していた。 体系、実績、年数。全部、比べられる土俵の上にあるものです。自分から、比べられる場所に乗っていた。
情緒的価値って、たぶん、出したくないところにしかありません。うまくいった話には、だいたい入っていない。
これ、経営に置き換えると
3つあります。
1つ目。選ばれた理由は、自分で考えない。 差別化の最短ルートは、お客さんに直接聞くことです。「なぜ、うちに頼んでくれたんですか」。返ってくるのは、たいてい機能の話じゃありません。「返事が早かった」「話を最後まで聞いてくれた」。その言葉が、そのまま自社の情緒的価値です。
2つ目。採用も、まったく同じ構造です。 給与も休日も、大手とは比べられたら負けます。中小企業が勝てるのは、人、雰囲気、誇り、物語のほうです。うちで社員全員が毎日発信しているのも、結局これをやっています。働く前に、空気が伝わる。
3つ目。決めた言葉は、全部の接点で同じことを言う。 ホームページだけ立派で、見積書と請求書が事務的、というのはよくあります。お客さんは全部を見て「この会社はこういう会社だ」と決めています。
今日できる一歩
最近契約してくれたお客さんに、ひとりだけ聞いてみませんか。
「なんで、うちに頼んでくれたんですか」
そして、返ってきた言葉を、要約せずにそのままメモに残す。きれいにまとめた瞬間に、いちばんおいしいところが消えます。
僕のほうは、これから「出したくない年表」を作ります。
さあ、いこうか😆
P.S.
昨日は、真ん中の子(長男)の10歳の誕生日でした。ケーキはサッカーのユニフォーム型。背番号は18です。ろうそくを立てるところから、もう本人がいちばん楽しそうでした。18年の年表より、こっちのほうがよっぽど早く出せます😆

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