ブランディング
ブログの街を19年つくった僕が、書かなくなっていた
毎日ブログが続かない本当の理由と、19年分の記録

結論から書きます。
2026年8月19日、大阪。僕は、隣に座った男に完全に持っていかれました。
そして翌朝、止まっていたものを、今日からもう一度動かすと決めました。
この記事は、その宣言です。
隣の席の男は、6,828日休んでいなかった
その日はMBSという、3日間みっちりマーケティングを叩き込まれる経営者向け講座のDay2でした。主催はラーニングエッジさん。朝9時から夕方まで、ストーリーテリングと販促設計の講義です。
会場には200人ほどの経営者。
そこで一日ずっと隣に座っていたのが、広島の板坂裕治郎さんでした。

一人称が「ワシ」。バリバリの広島弁。
この方、ブログを毎日書き続けて10年以上。その日の朝の記事で、vol.6,828。
6,828日、一日も休まず、です。
しかも、です。
翌朝そのブログを開いたら、前日のこのセミナーのことが、もう1本の記事になっていました。
「200人の経営者セミナーに飛び込んでみた結果」。
体験から公開まで、一晩。
隣で同じ講義を聞いていたのに、片方はもう発信していて、片方はまだ何もしていない。この差が6,828日分、積み上がっているわけです。
「ワシなんか闇金から1億ぐらい借りとったんよ」
休憩時間に聞いた話も強烈でした。
「ワシなんか闇金から1億ぐらい借りとったんよ。普通に言うたら、ほんまポンコツやろ? でも、そこまでやったから、お金に困る人の気持ちが誰よりも分かる。そう言えたら、ガツンとプラスの強みに変わるんよ」
隠したい過去ほど、出し方ひとつで一番の強みになる。
じゃあ最初は反応がなくて怖くないんですか、と聞いたら、返ってきたのは一言でした。
「心配するな。誰も見てない。それが答え」
この一言に、10年分の言い訳をまとめて崩されました。
僕は、書く場所をつくってきた側の人間です
ここからが、この記事の本題です。
誤解のないように、先に事実を書いておきます。僕は、ブログを書いてこなかったわけではありません。
うちの会社は、ナガブロという長野県のブログポータルを19年運営しています。
いまも18,362ブログが動いていて、月間200万PV。長野の人が「ちょっと書いてみようかな」と思ったときに、その受け皿になっている場所です。
つまり僕は、県内の人たちに「書く場所」を用意してきた側の人間なんです。
だから当然、自分でも書いてきました。
僕のブログの第1号は、2007年2月2日。2007年に77本、2008年に78本。ほぼ週2ペースです。そこから今日まで、400本以上を書いてきました。
問題は、そのあとでした。
2013年31本、2014年7本、2022年1本
自分のブログの本数を、年ごとに数えてみたんです。
正直、見なきゃよかったと思いました。
| 年 | 本数 | |
|---|---|---|
| 2007年 | 77本 | 第1号は2月2日 |
| 2008年 | 78本 | ほぼ週2ペース |
| 2011年 | 45本 | |
| 2013年 | 31本 | |
| 2014年 | 7本 | ← ここで折れている |
| 2019年 | 6本 | |
| 2021年 | 4本 | |
| 2022年 | 1本 | |
| 2023年 | 2本 |
そして直近は、2026年5月21日の1本。そこから今日まで、1年3ヶ月、止まったままです。
2014年に、何かが折れています。
会社が伸びて、講演の依頼が増えて、社員が増えて、案件が増えて。一つひとつは全部いいことなのに、その分だけ自分の言葉が減っていきました。
書く場所をつくった人間が、その場所でいちばん書かなくなっていた。
これが、この記事でいちばん書きたくなかった事実です。

なぜ止まるのか。理由は3つとも、かっこ悪い
自分の10年を棚卸ししたら、止まった理由がはっきり3つに分かれました。全部かっこ悪いので、そのまま書きます。
1つめは、完璧主義です。
「ちゃんとしたもの」は、腰を据えて、まとまった時間を取って書くもの。そう思い込んでいました。だから「今日は時間がないから、また今度」を繰り返して、まとまった時間は一度も来ませんでした。
板坂さんの言葉を借りるなら、100点を狙って止まるのが、いちばん最悪です。80点の型に流し込んで、毎日出す。直すのは翌日以降でいい。
頭では分かっていたのに、自分にだけは適用していませんでした。
2つめは、「これを書いて誰の役に立つんだろう」でした。
僕の一日なんて、地味なものです。商談に行って、断られて、移動して、また商談。こんなものを読みたい人がいるのか、と本気で思っていました。
でも今なら分かります。読みたい人がいるかどうかを、書く前に自分で判断していたのが間違いでした。 判断するのは読み手です。書き手じゃない。
3つめは、忙しさです。
これがいちばんズルい言い訳で、10年間ずっと使えてしまうんですよね。しかも、忙しいのはこの先も変わりません。
Facebookに流した10年分は、もう取り出せない
まったく発信していなかったわけではありません。Facebookには、その日思ったことをずっと書いてきました。
でもそれは、流れて消えていく場所です。
3年前に自分が何を考えていたか、あそこから取り出すことはできません。積み上がらないものに、10年分の言葉を流していたことになります。
一方で、ブログに残した400本は、今も全部読み返せます。
積み上げた場所と、流した場所。この差が、あとから効いてきます。
同じ週に、もう一つの答え合わせがあった
同じ週に、まったく別のところから答えが飛んできました。
エイベックス創業者・松浦勝人さんが、noteを始めていたんです。1週間で4本。フォロワー2万人、スキは5万超。
僕も全部読んで、すっかりファンになりました。特に「僕は『有頂天』に100億円払った」は圧巻でした。
30代で有頂天になり、失ったお金は約100億円。上場で得た現金を使い切った分と、後輩が巻き込まれた不動産投資で被った分。それが金額入りで、淡々と書かれています。
61歳になった今、有頂天になって目的を見失った過去まで、隠さずに書いている。
でも僕が引っかかったのは、そこじゃありませんでした。文章がうますぎるんです。
美文という意味ではありません。どこから始め、どのエピソードを使い、何を削り、最後にどう着地させるか。その構成と編集が異常にうまい。
一流のライターがついているんだろうと思っていました。
ところが8月20日、ご本人が「ほぼAIが書いている」と明かされました。
最初に聞いたときは、耳を疑いました。でも、からくりを知って腑に落ちました。
松浦さんは、長年書いてきたアメブロの文章、一生を振り返ったブログ、10年間の月刊誌連載、YouTubeの生配信——それを全部渡していたんです。
ゼロから「松浦勝人」を作らせたんじゃない。60年以上かけて生きてきた人生と、長年残してきた膨大な言葉。それを渡して、掘り起こして整理させていた。
ここで、さっきの話に戻ります。
渡せる材料を持っている人が強い。材料がない人は、どれだけ道具が良くても何も出てきません。
僕がFacebookに流した10年分は、もう渡せません。ブログに残した400本だけが、渡せる材料として残っています。
これ、経営に置き換えると
板坂さんが言うNJE理論は、こうです。
専門性 × 一次情報 × 実体験。
きれいな文章が無限に量産される時代に、この掛け算だけが残る。松浦さんの話と、まったく同じことを言っています。
MBSの講義でも、同じ構造の話が出ました。
「2005年3月、渋谷区幡ヶ谷のマンションオフィスで——と、日時と場所と数字を言った瞬間、人は物語に引き込まれる」
iPodが売れたのは性能の説明じゃなくて「選曲をポケットに」の一言だった、という話も出ました。機能の羅列は響かない。物語だけが届く。
そして講師はこう言いました。
「淡々と書くな。泣きながら書け」
熱量の乗った一次情報。あの日、あの会場の、あの席に、僕がいた。 この事実だけは、誰にもコピーできません。
グループワークでは、経営者の生の声もたくさん聞きました。
- 「発信、めんどくさいんですよね」
- 「何を書けばいいか分からない」
- 「いいねがつかなかったら恥ずかしい」
全部わかります。僕も同じことを思って、10年止めました。
でも、この3つはよく見ると全部「出す作業」の話で、「材料」の話じゃないんですよね。
材料は、経営者ならもう持っています。昨日の商談。うまくいかなかった会議。断られた提案。それが一次情報です。
足りないのは材料じゃなくて、それを出す仕組みだけでした。

今日から、365日書きます
だから、決めました。
毎日の経験を、毎日1本の言葉に変えます。365日。
中身は全部、僕がその日、実際に見て、聞いて、感じたことだけ。2007年に77本書いていた自分に、まず戻ります。そのうえで、板坂さんの6,828日には、今日から1日ずつ近づいていきます。
「心配するな。誰も見てない」
そう言われた通り、最初の100本は素振りだと思っています。反応がないのが正常。
それでも1年後には365本の一次情報が積み上がっていて、それは誰にもコピーできない僕の資産になっている。
19年、人には「書く場所」を用意してきました。その管理人が更新を止めている状態を、そろそろ終わりにします。
今日できる一歩
もし今、発信が止まっている自覚があるなら、自分の投稿数を年ごとに数えてみてください。
ブログでも、noteでも、YouTubeでもいい。数字にした瞬間に、言い訳ができなくなります。 僕は「2014年 7本」を見た瞬間に、逃げ場がなくなりました。
そして、今日1本だけ出す。完成度は要りません。
特別な才能も、うまい文章もいりません。要るのは、現場に立って、感じて、それを自分の言葉で毎日残すこと。それだけです。
2014年に置いてきたものを、拾いにいきます。
さあ、いこうか。
P.S.
Day2の夜は焼肉でした。宿題も山ほど出て、翌日のDay3は朝9時スタート。それでも爽快な顔で行ってきました。板坂さんの隣に座れたのは、たぶん一生ぶんの運を使いました。
この記事の短縮版を note にも出しています。