ブランディング

僕の家は、アメリカより古い

ブランディング

僕が生まれ育った家は、アメリカ合衆国より70〜90年ほど古い。

建てられたのは元禄時代です。西暦でいうと1700年の少し手前。アメリカが独立宣言を出したのが1776年ですから、家のほうが先に建っていたことになります。

今日、49歳になりました。誕生日に何を書こうかと考えて、この家の話にします。


冬は、本当に寒い

家があるのは長野県、松本平の東のはずれです。

太い梁が黒光りしていて、天井が高くて、冬は本当に寒い。子どものころは「不便な家だな」としか思っていませんでした。誇りに思ったことなんて、一度もありません。

もちろん、300年のあいだには何度も手が入っています。屋根も直したし、間取りも変わった。同じ材木が300年そのまま建っているわけではありません。それでも骨格は元禄のままで、同じ場所に建ち続けています。

いまはこの家が、株式会社ウェブエイトの登記上の本社です。文化庁のウェブサイトにも載っています

ただ、住んでいると否応なく刷り込まれることがあります。

自分は、始まりではない。


「いつか市長になりたい」の理由が、分からなかった

その刷り込みが効いていたんだと思います。

僕は若いころから、なぜか「いつか市長になりたい」と思っていました。

政治家の家系でもないし、誰かに言われたわけでもない。理由が自分でも分からないまま、その気持ちだけが何年も居座っていました。

分かったのは、30歳くらいのころです。

お盆に実家でゆっくりしていて、父と飲みながら、なんとなく家の話になりました。目的なんて何もない、ただの世間話です。

そこで分かったんです。

曾祖父が、村長だった。

会ったこともない人です。写真も数えるほどしか見たことがない。

でもその一言で、自分の中の説明のつかなかった衝動に、いきなり筋が通りました。「地域をよくしたい」と思い続けてきた理由が、後づけではなく、もともとあった

こじつけかもしれません。血がどうこうと言うつもりもありません。

ただ、あの日から僕は迷わなくなりました。


僕たちは、かけがえがない

子どもがいる人なら、わかると思います。

僕たちは子どもに、全力の愛を注ぎます。加減なんてしません。

ということは、僕たちも同じだけ注がれてきたということです。親から、全力で。

そしてその親も、その親から注がれていた。さらにその親も、その親から。

そうやって遡っていくと、こうなります。

先祖代々の愛が全部詰まっているのが、いまの自分。

僕はこう考えています。

だから、これは古民家の話ではありません。家系の話でもありません。

家が新しくても、家業を継いでいなくても、同じです。誰にでも、そこまでの積み重ねがある。一人ひとりが、かけがえのない存在です。

自分がいまここにいる時点で、それはもう証明されています。


ブランドは、企画より事実のほうが強い

この話を、仕事の話に翻訳します。

僕はブランディングを仕事にしていて、経営者と一緒に「その会社らしさ」を言葉にしていきます。

そこで毎回ぶつかるのが、「かっこいい企画を考えようとしてしまう」という壁です。

  • 流行っているキーワードを入れる
  • 競合が言っていない言葉を探す
  • 何かおしゃれなコンセプトをつくる

気持ちは分かります。僕も昔やりました。

でも、そうやって考えた言葉は、だいたい1年で言わなくなります。自分が本気で信じていないからです。

一方で、強いのはこっちです。

後づけの企画より、もともとあった事実。

これは考えて出すものではなく、掘って出てくるものです。そして掘って出てきたものは、簡単には剥がれません。


あなたの会社にも、必ずあります

「うちにはそんな歴史ないですよ」と言われることがあります。

創業3年でも関係ありません。掘る場所が違うだけです。

僕が実際に聞いていくのは、こういうことです。

  • なぜ、この仕事を選んだのか(前職で何が嫌だったか、が一番出ます)
  • なぜ、この土地でやっているのか
  • 創業のとき、誰に助けられたか
  • いちばん感謝された仕事は何だったか
  • 絶対にやらないと決めていることは何か

このどれかに、必ず引っかかりがあります。そこが軸になります。

ポイントは、きれいな話にしないことです。

「前職の社長のやり方がどうしても許せなかった」でいい。「たまたま実家がここだった」でいい。事実は、飾らないほうが強く働きます。

僕は毎回、経営者にこう言っています。

「新しく考えなくていいです。もう持っているものを、まだ言葉にしていないだけです」


49歳。そろそろ、終わらせ方を考える

最後に、今日だから書けることを。

僕はずっと「40代前半が最強だ」と言ってきました。体力があって、経験もあって、判断が速い。いちばん打てる時期です。

そして40代後半は、仕事の"終わらせ方"を考える時期だとも言ってきました。

その後半に、僕はもう入っています。今日で49歳です。

終わらせ方というのは、辞めることではありません。次に渡せる形にすることです。

これは、この家を見ていると分かります。

300年続いたのは、誰かが「守ろう」と決意したからではないと思うんです。毎日そこで暮らして、痛んだら直して、次の代に渡した。それを繰り返した結果として、たまたま300年になった。

「守る」と力んだ人ではなく、渡した人が残した。

会社も同じです。僕がいないと回らない状態は、かっこよくない。社長ブランディングに偏りすぎて痛い目を見たこともあります。だからいま、社員が前に出る形に作り替えているところです。

50年目は、その続きをやります。派手なことは増やしません。地味に、次に渡せる形を1つずつ増やしていきます。

今日はこのあと、ニュービジネス協議会の会に出かけます。誕生日だからといって、特別なことはしません。

さあ、いこうか。


この先を、一緒に

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