マーケティング
温泉街では、匂いが客を呼んでいる
草津温泉の店先に学ぶ集客の工夫|行列・ファストパス・実演・足湯席・湯もみ

この週末、家族で草津温泉に行ってきました。
着いた日は小雨。ジャンパーを着ていても寒くて、みんな「早く温泉に入りたい」とずっと言っていました。

それでも、温泉街を歩き始めたら、僕は止まらなくなりました。
「各店、めちゃめちゃいろんな工夫があるな。めちゃ勉強になる」
家族には、たぶんうるさかったと思います。
温泉街のお店は、ほぼ全員が通りすがりの人を相手にしています。チラシも、予約も、事前の比較検討もない。前を通る数秒で、足を止めてもらえるかどうか。それだけの勝負です。
その勝負のしかたが、店ごとにまったく違いました。歩いた順に書いていきます。
1. 匂いと煙が、看板になる
最初に足が止まったのは、焼き鳥でした。

遠くからいい匂いがして、近づくと煙が見える。小雨の中、傘をさした人の行列ができていました。
「さすがに、これはうまいな、商売は」
思わず口に出ていました。
焼いているところが、通りから丸見えです。看板の文字を読むより先に、匂いと煙と音が、もう客を呼んでいる。 行列そのものが、次の人を呼ぶ看板にもなっています。
2. 待ち時間を、隠さない
別のお店の前には、こんな案内が立っていました。

「並ばず入店ファストパス」。QRコードを読めば順番が取れて、並ばずに入れる。その下には「ここからの待ち時間 約30分」。
行列は、お店にとってはうれしい反面、お客さんにとってはストレスです。待ち時間を正直に見せて、並ばない方法まで用意しておく。行列を、不満ではなく安心に変えていると思いました。
3. 名物を、言い切る
群馬名物の看板も目立ちました。

「群馬名物」「大人気」「超絶幅広」。ひもかわうどんの看板です。
旅行者は、その土地のものを食べたい。でも、何が名物なのかは知らない。だから「これが名物です」と言い切ってくれる店に入ります。迷わせないことが、親切になっています。
もつ煮の店も、言い切っていました。

モツ煮定食に添えられた英語は、「The Perfect After-Onsen meal」。温泉上がりに、ちょうどいい一食。誰が、いつ食べるものなのかまで言い切っています。
その横には、14時から17時のハッピーアワー。夕食前の空いた時間に、人を呼ぶ工夫です。
4. 「せっかく」を、背中を押す言葉にする
上州牛のひつまぶしの店には、こう書いてありました。

「せっかくなので、ちょっと贅沢。」
旅行中の人の頭の中にある言葉を、そのまま看板にしています。値段の説明より、この一言のほうが効く。旅先では、みんな「せっかくだから」と自分に言い訳をしたいんです。
5. 作るところを、見せる
ごまのお店の窓には、こう書いてありました。

「ごまソムリエによる金ごまの杵搗き実演中!」。そして窓には「カレーパン完売しました」の札。
実演は、匂いと同じで、足を止める力があります。そして完売の札は、「ここは人気の店です」という証明になります。売り切れは、隠さないほうがいい。
抹茶の店は、体験そのものを売っていました。

「草津抹茶体験コーナー」。抹茶を売るだけでなく、体験として売っている。旅の思い出になるのは、モノより体験のほうです。
6. 座る理由を、つくる
足湯の席があるカフェもありました。

足湯に入りながら、食べられる。しかも「足湯席はペット同伴可能!」。
犬を連れて旅行している人は、入れるお店が限られます。その人たちに向けて、はっきり「どうぞ」と書いてある。誰に来てほしいかを、店先で言っているわけです。
7. 写真を、撮らせる
だるまがずらりと並んだ壁もありました。

横には「草津温泉」と書かれた木札。ここで写真を撮ってください、と言っているような場所です。撮った写真はSNSに上がり、お店の名前と一緒に広がっていきます。
8. お猿の湯もみショー
夕食の前に、お猿の湯もみショーを見に行きました。

入場は、整理券の番号順。早く来た順ではありません。
始まる前に、スタッフさんから案内がありました。ショーの最中は、写真も動画も禁止。 スマホはバッグにしまってください、と。

そして、ショーが終わったら撮影OK。
うまいなと思いました。ショーの最中は、全員が舞台に集中する。終わってから撮った写真は、みんなSNSに上げる。体験の質を守りながら、広がる仕組みも作っています。
ショーの中身も、ちゃんと草津の話でした。草津の湯は50度近くあって、そのままでは入れない。でも水で薄めると、効能が落ちる。だから湯をかき混ぜて冷ます、それが湯もみだ、と。お猿さんを見に来た子どもたちが、帰るころには草津の湯の話を覚えている。
同じ施設には、カピバラもいました。

9. 次の日は、本物の湯もみ体験
次の日は、湯もみ体験に行きました。

料金は、見学しても体験しても300円。それなら体験したほうが得だ、となります。家族で板を持って、湯をかき混ぜました。
前の日にお猿さんのショーで、なぜ湯もみをするのかを聞いていました。理由が分かったうえで板を持つと、ただの体験が少し特別になります。ショーが、翌日の体験の予習になっていたわけです。
帰りがけには、こんな見本も。

群馬県産の肉厚しいたけの串焼き。写真ではなく、実物の見本を店先に置いています。大きさが一目で分かる。
経営に置き換えると
温泉街を歩いて分かったのは、どの店も「前を通る数秒」に全力だということです。
これは、温泉街だけの話ではありません。
いまのお客さんは、Googleマップや検索で、お店や会社の前を「通りすがり」ます。写真を数枚見て、口コミを少し読んで、数秒で決める。Googleマップの写真やホームページの最初の画面は、温泉街の店先と同じです。
その店先に、草津の店がやっていたことが置けているか。
・匂いと煙:作っているところ、働いている人が見えるか
・待ち時間:予約の取り方、待ち時間、営業時間を正直に見せているか
・言い切り:「うちはこれです」「こんな人に向いています」と言い切っているか
・せっかく:お客さんの頭の中にある言葉で書いているか
・証明:完売、行列、テレビで紹介、口コミの数。人気の証拠を見せているか
・座る理由:誰に来てほしいかを、はっきり書いているか
・撮りたくなる場所:お客さんが写真を撮って、広げたくなるものがあるか
全部やる必要はありません。1つあれば、足は止まります。
今日できる一歩
自分の会社のGoogleマップを開いて、写真を、初めて見るお客さんのつもりで眺めてみてください。
前を通る数秒で、足を止める理由が1つでもあるか。
なければ、まずは1枚。作っているところか、働いている人の写真を足してみてください。それが、温泉街でいう「焼き鳥の煙」になります。
さあ、いこうか😆
P.S.
宿に戻る前に、教えてもらったお店で温泉卵を食べました。

5つ頼んで、カップに割って、その場で家族で食べました。寒い日の温泉卵は、ちょっと忘れられない味です。
ちなみに、草津に向かう途中で立ち寄った山城の跡では、地元の方に松茸を見せてもらいました。1本1万円だそうです。SNSに載せるなら場所が分からないように、という話になったので、どこの山城かは書かないでおきます。
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