チームと仕組み

消しゴムを、使わない国の話

失敗を祝福する組織文化は、どうやって作るのか

チームと仕組み

今朝は毎週土曜の朝の生配信、「著者フェス!Saturday」でした。出版界のおやっさんこと川田修さんと一緒に、毎回ゲストの著者をお迎えしています。

今日のゲストは、フランス在住14年のトレオレル美智子さん。8人のお子さんを育てながら、現地の働き方を発信されている方です。向こうは深夜1時。その時間にあの熱量で話せるのが、すでにフランス流なのかもしれません。

左上が川田修さん、右上が僕、下がフランスから参加のトレオレル美智子さん
左上が川田修さん、右上が僕、下がフランスから参加のトレオレル美智子さん

テーマは「フランス人の気楽な働き方、全力の休み方」。聞いた話の中で、ひとつだけ、聞いた瞬間に姿勢が変わったものがありました。


「苦労は買ってでもしろ」が、通じない国

最初に出てきたのが、この話です。

「日本では私自身も、苦労は買ってでもしなさい、苦しめば苦しむほど、それを乗り越えた分だけ幸せになれるんだよとか、苦しいことがベースに人生はあるんだっていう考えで生きてきたんですね」

ここまでは、僕らにも馴染みがあります。問題は次でした。

「フランスに来てびっくりしたのが、日本であんなに苦労を買ってでもしろって言ってたのに、フランスはみんな苦労を買わないんですね」

人生はいいことと楽しいことばかりで当たり前。たまに嫌なことが来ると、それを異物として排除する。そういう前提で生きている、と。

美智子さんは最初、そんなうまい話があるかと疑ったそうです。ちゃんと苦労していないと、後でこけるぞ、と。

「もう今フランス14年住みました。いや、皆さんこけるどころか上がってる上がってる」

悩んでいる時間は、仕事が進んでいない

僕はここで、捉え方の違いなんじゃないかと質問しました。辛いことは同じように起きていて、それを通過点と見るか、そこに留まるかの差ではないか、と。

返ってきた答えが、経営の話としてまっすぐでした。

「働く時にね、こう悩んで悩んでいる時ってはかどらないんですよ。仕事がはかどらないアイディアも浮かばないし」

苦しいことが来ても「あ、なんか来たわ」と受け流して、自分はいい状態のままでいる。すると仕事は進み続ける。結局、成果が高いのはそっちだという話です。

精神論ではなく、稼働率の話をしていました。悩んでいる時間は、生産していない時間です。

そして、消しゴムの話

いちばん刺さったのが、これでした。フランスの小学校の話です。

「小学校の頃から鉛筆と消しゴムではなく、ボールペンで書いて、間違ったら間違えた跡を残しておく。もう間違えることは当たり前だということが、子供の頃から意識に入ってる」

対して日本は、と続きます。

「日本人の方は私もそうだったけど、もう最初から間違えなかったかのように、決して完璧なノートに仕上げると」

……これ、すごくないですか。

僕らは子どものころから、失敗をなかったことにする訓練を受けてきたわけです。ノートを完璧に仕上げる練習を、6年間。

しかも美智子さんは、その先を指摘しました。失敗したときの落ち込み方がずれる、と。間違えたことを反省するのではなく、間違えた自分がどれだけダメな人間かのほうに落ち込んでしまう。

思い当たる人、多いと思います。僕も含めて。

うちのビジョンは「挑戦に祝福を」

この話を聞きながら、自分の会社のことを話しました。

ウェブエイトのビジョンは「挑戦に祝福を」です。

やらなかったこと、できると言ってやらなかったことには、僕は怒ります。でも挑戦して失敗したことについては、一切ない。むしろ祝福です。

美智子さんに「フランス流ですね」と言われて、たしかにそうかもしれないと思いました。昔の僕はそうではなかったので。

ただ、今朝の話を聞いて、うちのビジョンには足りないものがあると気づきました。

「祝福する」と言うだけでは、足りない

フランスがやっているのは、祝福の宣言ではありません。ボールペンという道具で、消せなくしているんです。

間違いが物理的にノートに残る。だから「間違えるのが当たり前」が、教わる前に体に入る。仕組みが先で、価値観が後なんですよ。

日本の会社で「失敗を恐れるな」と言われても効かないのは、ここだと思います。言葉は消しゴムで消せる。失敗の記録も、たいてい消される。議事録に残るのは決まったことだけで、やってみてダメだったことは残らない。

だから同じ失敗が3年後にまた起きる。

今日できる一歩

やってみてダメだったことを、消さずに書き残してください。

社内の共有ドキュメントでも、日報でも、月次のミーティングの最後の5分でもいい。「今月やってみて、効かなかったこと」を1行。

ポイントは、反省文にしないことです。フランスの子どもたちがノートに残しているのは反省ではなく、ただの跡です。

跡が残ると、次の人が同じ穴に落ちません。 それが「祝福」の実務的な意味だと、今日わかりました。

当日の配信は、YouTubeにアーカイブが残っています。33分です。文字で読むより、美智子さんの話しぶりを見てもらったほうが早いかもしれません。

さあ、いこうか😆

P.S.

美智子さんの著書は『フランス人の気楽な働き方、全力の休み方』(フォレスト出版)。フランスには「ワークライフバランス」という言葉自体が無いそうです。仕事も休みも、自分の人生を生きるためにあるものだから、そもそも天秤にかけない。この話も面白かったので、いつか書きます。

あなたの会社の「らしさ」は、どこにありますか

30秒で終わる診断があります。考えて出すものではなく、もともとあるものを掘り出すための入口です。